ハンスがドライブに連れて行ってくれて、道中いろいろと興味深い話を聞かせて貰いました。
オランダの国土は非常に海抜が低く、多くの農地が海面より低い位置にあります。満潮や嵐などで堤防が決壊すると洪水による大惨事に見舞われるため、大変な労力をかけていくつもの堤防を築いてきたのだそうです。
■3重に築かれた堤防
たとえば、フローニゲンから少し北に行ったノードポルダーザイル(Noordpolderzijl)周辺では、3重に築かれた堤防を見ることができます
最初から3重だった訳ではなく、「波よけの堤防を築く→土砂が溜まって陸地ができる→できた陸地の外側にさらに堤防を築く」というプロセスの繰り返しで現在の姿になったそうです。
「これらの堤防には名前があるんだ。海に面した外側の堤防は『見張る者(Watcher)』、その内側の堤防は『まどろむ者(Sleeper)』、さらに内側の堤防は『夢見る者(Dreamer)』と呼ばれていて、万一の高潮があっても3重に農地が守られる仕組みなんだよ」とハンス。
このような形で、オランダは干拓地を利用して人工的に国土面積を広げてきたそうですが、言うは易く行うは難し。。。堤防の外側に新しい陸地が出来ても、塩分が濃すぎてそのままでは農地利用できません。そこで、塩分を吸収する植物を植え、辛抱強く何年もかけて土壌を改良してきたそうです。
何の説明もなければ一見のどかな田園風景が続いているようにしか見えませんが、こうして説明してもらうと、気が遠くなるような干拓の歴史を目の前に見ている事に気付きます。オランダ人すごいなあ。
■世界最大の巨大堤防
さらに、オランダにはアフスライトダイク(締め切り大堤防)と呼ばれる世界最大の堤防があります。初めて地図で見たとき、なんでこんな所にこんな巨大な橋を建設する必要があったんだろう?と思っていましたが、実は橋ではなくて全長32キロの大堤防だと聞いてぶったまげました。
堤防というからには海水を遮っているわけです。このアフスライトダイクが出来る前は、ザイデル湾と呼ばれる大きな湾があったそうですが、湾の入り口を巨大堤防で締め切った結果、現在では淡水の湖になっています。と同時に、湾の内側を干拓してさらに新しい農地を生み出したのだとか。もう訳が分からないくらいスケールのでかい話です。オランダ人おそるべし。
というわけで、堤防の内側の湖のあちこちに、かつての港町の名残が残っていたりするのが面白い。。。以前は海に面していた漁港が、堤防によって淡水の湖に変身したわけですから、人々のライフスタイルも大きく変わったに違いありません。
これらの治水の歴史から感じるのは、オランダ人は昔から知恵を絞って努力してきたんだなぁ、という事です。そしてこんなにも大きな堤防を築くことによって、国土を洪水から守るだけでなく、農業の発展も促してきたんですね。興味深いのは、オランダではこんなにも人工的に自然がコントロールされているというのに、昔ながらの農村風景がそのまんま残っており、日本よりもだいぶナチュラルな印象だということ。この農村の調和のとれた美しさは一見の価値ありだと思います。
また、オランダの国土面積は日本よりだいぶ小さいわけですが、農産物の生産性は驚くほど高く、野菜や乳製品などの多くが外国への輸出されていると聞いてビックリ。す、すごい。こんな小さな国土でも、国外に輸出できるほどの農産物を生産できるなんて。
農村は道端の草地に至るまできちんと手入れされており、見た目に美しいだけでなく経済的にも豊かさを感じます。どんどん農地が減って食料を輸入に頼っている日本とは対照的です。オランダを手本にすれば、日本もいろいろな問題を解決できるんじゃないかなぁ?