ブルターニュ地方の人里離れた一軒家で暮らすパトリック。庭の向こうには両親の代から受け継いだリンゴ畑があります。しかも沢山の動物がいて、犬と猫だけでなく羊やヤギ、さらに馬まで飼っていたのはビックリ。朝、テーブルで朝食をとっていると、朝陽を浴びたリンゴ畑を背景に、愛馬ナッジが草を食んでいる風景がダイニングの窓から見えるのです。ちょ、超贅沢なんですけど!
毎日ナッジと一緒にリンゴ畑を往復するのですが、何だか足元がゴロゴロすると思ったら地面に数え切れないほどのリンゴが落ちているのです。ってことは、もしかしてリンゴ食べ放題?と思ったら「実はこのリンゴは加工用に出荷するんだ。でも大鍋で煮ればコンポート(リンゴジャム)が作れるよ。」「ええ!? コンポート作ってみたい!」。。。というわけで、2人で美味しそうなリンゴを3キロほど拾ってきました。
コンポートというのは、リンゴを煮て砂糖を加えペースト状にしたリンゴジャムのようなものです。パトリックのリンゴはもちろん有機栽培なので、皮を剥かずにざっくり切って大鍋で煮るのがツウのやり方なのだそうです(リンゴの皮に含まれる成分が健康に良い)。
火が通って柔らかくなった頃に、手動の漉し器(フランス製)でグルグルやると、うまい具合に皮だけ外れて滑らかなペーストが出来ます。これに砂糖を加えて更に煮詰めれば出来上がり。
近くにあったジャムの空き瓶にコンポートを詰めて悦に入っていたら「もうひとつ工程があるんだよ。保存のために瓶ごと殺菌処理しないとね」と、ドラム缶みたいな謎の容器に水を入れて瓶を沈め、火にかけるパトリック(どうしてそんな物までもってるんだ)。ドラム缶(?)のてっぺんには温度計がついていて、これで殺菌温度を管理するらしい。すごーい、本格的!
。。。というわけで、長期保存が可能になった有機リンゴの手作りコンポートをお土産に貰ってしまいました。わぁい♪
ブルターニュの味覚がもうひとつ。パトリックの家の付近には沢山の栗の木があって、大量の実が地面に落ちているのです。日本でよく見かけるような小くてショボい栗の実ではなく、非常に質の高い大きなツヤツヤの栗の実です。この事態に大興奮した私は、パトリックにお願いして栗拾いのお散歩に連れて行って貰いました!
ほかに誰も拾う人がないので、あっという間に持つのが重いほどの栗の実をゲット!フランスではどうやって食べるのかな?と思ったら、丸ごとフライパンに入れて、薪ストーブの上に乗せてじっくり焼くらしい。おお~さすが!カッコイイ!(破裂防止のために、ナイフで栗の表面に傷をつけます)。30分ほどで、焦げ目がついて香ばしい香りが漂ってきたら出来上がり。ホクホクで甘~い!
パトリックの趣味はハンティングです。夏は近所の海で素潜りして、スピアー(銛)で魚を突いてフィッシュ・ハンティング。そして秋はご覧のとおり、弓の練習をしています。「もうちょっと練習して上手くなったら、この弓で森に狩りに出かけるつもりなんだ。」ひえええ、弓で狩りですか!? 「狩猟組合に登録すればライフルでも弓でも狩りは可能だよ」どうしてライフルを使わないの?「ライフルよりも弓のほうが自然に近いと思うからさ。」
。。。動物の命を奪うからには、敬虔な気持ちでいたいというパトリック。練習の時でも、一矢ごとに責任を感じながら射るそうです。
「狩猟は残酷だという人がいるけれど、屋内でギュウギュウ詰めに飼育された動物の肉をスーパーで買うのは残酷じゃないのかい?僕も肉を食べるけど、少なくともそれは最後まで自然の中で幸せに暮らしていた動物の肉に限りたい。」
もしかしたら狩猟も一種の瞑想であり、哲学なのかも知れません。
自然に近いライフスタイルを好むパトリックは、ときどき愛馬ナッジにまたがって海岸まで乗馬したりするそうです。
「本当のこと言うとね、将来はクルマすら使わずに暮らしてみたいんだ」
えっ?買い物はどうするの?
「もちろん馬にまたがって行くつもりさ、ははは」
。。。。さすがパトリック。ヨーロッパ人は発想が違う。いつか本当にそんな日がきたら、有機野菜の市場まで馬に乗っていくパトリックの姿を写真を撮ってみたいものです。