出発の朝、パトリックが突然「ナオコ、日本のコインを持っていたら僕にくれないか?一番安いコインでいいんだ」と不思議な事を言います。もちろんお安い御用!とあるだけの日本硬貨をパトリックに差し出すと、「ありがとう。十円玉だけでいいよ。では僕からはこれを」と、そこにはピカピカのオピネル(OPINEL)のナイフが。。。(゚Д゚)
「突然コインをねだったりして御免ね。実はフランスではナイフを友達に贈るとき、その刃が友情まで切ってしまわないよう、相手のコインと引き換えにする習慣があるんだ。ほら君、果物ナイフしか持ってないでしょ?このオピネルはきっと旅に役立つと思うよ」
オピネルと言えば有名なフランス製のナイフです。いくつもサイズがありますが、パトリックが選んでくれたのはNo.8。最も使い勝手が良いとされている大きさです。ステンレスではないので錆びに弱い事が知られていますが、その分カーボンスチールの切れ味と刃の持ちはステンレス製よりも遥かに優れているらしい。
この新品のオピネルをさらにパトリックが研ぎ増ししてくれました。試しに紙に刃を当ててみると、音も無くカッターのような切れ味でビックリです。しかも折りたたみ式で安全だし、ロック機能まであって言う事なし。嬉しさのあまり刃を出したり閉まったりして遊んでいました。が、うっかり柄をわしづかみにして刃をしまおうとした時にパトリックから注意が。
「そんな危ない持ち方をしちゃダメだよ。いいかい、ナイフは君の友達なんだ。だけど、この友達は君を傷つけることもある。痛い目に遭ってもそれは君の責任なんだ。だから常に正しい接し方を心がけるようにね」
おお。。。なんかパトリックに言われると深いなあ。まるで人生訓のようだ。よく覚えておこう。
雲ひとつ無い出発日和。パトリックはオピネルの他にも、一緒に作った山盛りのコンポートと、タルトとクロワッサンを箱ごと私に持たせてくれました。久々にエンジンをかけたワゴンRはなんかクモの巣が張ってたりして、出発を渋っている様子。。。でも行かなきゃ。
きっとこのナイフを使うたびに、パトリックの優しさと笑顔を思い出すんだろうなあ。
彼の健康と幸せを祈りつつ、一路パリを目指すのでした。