10年前、このジェマ(Diema)の村へのアクセスが悪路しかなかった頃、単身で雨季のぬかるみの中を運転してきた勇敢なイギリス人女性がいました。彼女の名はパム(本名Pamela Young)。ジェマの貧困を目の当たりにした彼女は、その後Village Venturesという支援プロジェクトを発足させ、今でも町の発展に大きく貢献しています。
。。。とそんな事はつゆ知らず、Village Venturesをキャンプ場か何かだと勘違いしてやってきた我々。ところが出迎えてくれたパムが、
「ようこそいらっしゃい。うちは一人一泊5ユーロ相当の寄付でキャンプOKよ。でも、ボランティアしてくれる人なら、好きなだけ無料で泊まってちょうだい。ちょうど1週間後に子供たちのクリスマスをやるから忙しいの。手伝って貰えると助かるわ~」
「本当ですか!? じゃあボランティアさせてください!」とロム即答。ええっ、マジで? Σ(゚皿゚)
私より先を急いでいたロムが、いきなり1週間ものボランティアに立候補するなんて予想外でした。環境圧力に弱い私は半ば自動的にボランティア決定。うーんジェマで1週間か。。。まあ2ヶ月ビザもあるし滅多にない機会だからアリかな?
翌日パムが、「あなた達に見せたい所があるの」と彼女のクルマに私とロムを乗せて、自ら運転して近隣のブッシュへ。。。道らしい道なんか全然ありません。まさにヤブの中のロバ車用のワダチを2駆の乗用車でひたすら走ります。ワダチは複雑に枝分かれしていて、もはや帰り道なんか全然わかりません。ワイルドすぎる!一体どこへ?
やがて茂みの向こうに小さな集落が見えてきました。草を編んだドーム状の小屋があちこちにあります。これは遊牧民の移動式の家屋で、解体して持ち運びが容易に出来るとのこと。つまりここに定住してるわけじゃないんですね。パムはその中のひとつの小屋を訪れ「ここよ、いらっしゃい」と手招き。
そこで私たちが見たのは、有り得ないほどやせ細った女の子の赤ちゃんでした。。。。
身体に全く力が入らないのか、座ることすらできずに砂の上に横たわって弱々しく息をしているだけ。手足はすでに骨と皮だけになっています。明らかに栄養失調です。しかしよく見ると、この家の他の子供たちだけでなくヤギなどの家畜まで非常に健康そうに見えます。どうしてこの子だけがこんな事に?
「この子はね、去年通りすがりの女性が産み落として、ここの家族に託してどこかに行ってしまったのよ。それ以来、彼らがこの子の面倒を見ることになったのだけど、この様子だと、この子だけ食事を与えられていないようね」
「孤児だったんですか。だけどいくらなんでも食事を与えないなんて。。。」
「仕方ないのよ。彼らは家族が食べるだけで精一杯なの。捨て子より我が子を優先して食べさせるのは理解できるでしょう?彼らを責めることはできないわ」
「そんな。。。」
あまりにもショックな現実に、私もロムも言葉を失っていました。そんな我々をよそに、パムは持参した離乳食を手際よく混ぜて、スプーンで一口ずつ赤ちゃんに食べさせています。こんな痩せ衰えて食事なんか出来るのだろうか?と思いましたが、一口、また一口と食べ進むにつれ、横たわっていた赤ちゃんがなんと自力で座れるまでに。すごい生命力だ。。。
さらに、裸で泥まみれだった赤ちゃんを水で洗い、可愛いベビー服を着せてあげるパム。「この子はこのままだと死んでしまうわ。病院に連れていかなきゃ」と、家族にロバ車を雇えるだけのお金を渡していました。
旅行者の目線で見るマリは比較的豊かで、道路は舗装され、町の食堂や市場には食べ物が溢れていて、我々が貧困や飢餓を目にする事はありません。しかし、一歩でも幹線道路を外れて奥地に入ると、噂で聞いていた栄養失調死というリスクが現実にあるという事を知りました。
パムはこんな世界で10年も頑張ってきたんだなあ。。。たった一人で。