その日の晩はグイナ滝の真横でピーターとビバークしました。たまたま、四駆で来ていたフランス人の2人組と合流できたし、グイナ滝を管理している地元の人々も一緒だったので、焚き火をしたりして意外と賑やかな夜でした。グイナの夜空は星で埋め尽くされていて素晴らしかったです。
でもって、滝を眺めながらいろいろ考えました。。。予定どおりガーナまで行くかどうか。。。
けど、グイナ滝に到着した時点でなんとなく答えは分かってたと思います。ずっと求めていた滝を訪問することが出来た今、他に訪れたいと思う場所はどこにも無い、と。
ガーナまで計画を立てた理由は、そこにグイナ滝から最も近い「英語が通じる港」があるからです。だけど、そこまで行くにはブルキナファソを経由しなければならず、各国のビザ申請やなんだで何日も待たされ、仮にガーナに着いたとしても、やることは多額の海運費用を払ってワゴンRを日本に送り返すだけ。本当にそれでいいのか。。。?
まだまだ働きざかりのワゴンR。アフリカでは大人気で、宿などで駐車する度に「なんて小さくて可愛い車!ぜひ売ってくれませんか?」と何度も引き合いがあったものです。日本ではありふれた大衆車かもしれませんが、アフリカではすごく目立つし、外装に多少の傷があっても新品のように輝いて見えるのです。
もちろん、エンジンも足回りも絶好調ですから日本でもきっと活躍してくれる事と思う。だけど、日本ではもう価値は付かないし、いずれ手放す時には結局オークションにかけられ、海外に輸出されてしまうでしょう。。。だったら、すでにアフリカに居る今、わざわざ費用をかけて日本に送り返す意味って何なんだろう?って思いました。
- ピーター、バマコで小さい車を買って旅を続けるって言ってたでしょう?
「ああ、知り合いが売ってくれる予定だったが、先日売れてしまったと連絡があったばかりだ」
- もし良かったら、このワゴンRに乗って旅を続けて欲しいのだけど。
「なんだって?本気で言ってるのか?」
- 本気です。その方が私の財布もワゴンRもみんな助かるから。
「おいおい、私が何屋だか知ってるだろう。後でクルマを売ってしまうぞ」
- むしろ、あなたの力で合法的に売却して貰いたいんです。そういうのに詳しいでしょう?
「で。。。君はどうするんだい」
- 私はマリのどこかから日本に帰るつもり。他に行きたい所はもうないし。。。
「そうか、だがもう一度よく考えなさい。それでも君の考えが変わらなければ、協力させて貰おう」
我ながら世にも奇妙な取引を持ちかけたものだと思います。
でも、目的の滝へと辿りついたいま、ピーターほどの経験の持ち主なら、大切なワゴンRを安心して託すことができると感じました。今まで、他の誰にもこんな提案をしようとは思わなかったけど。
勇気の要る決断でしたが、ワゴンRを手放す事を決めて、大きな安堵に包まれました。
ああ、これで良かったんだ。。。
※よく考えたらクリスマスイブでした。この日、グイナ滝から来たのと同じ悪路を引き返してカイの宿に無事帰着。運転はやっぱり大変でピーターの助けが必要だったけど、行きよりは精神的に全然ラクでした。。。カイの宿(CAJ)ではクリスチャンとフェデリカの2人が出迎えてくれて「どこへ行ってたの?昨晩戻らなかったから心配したよ!」って。。。有り難う。ごめんね心配かけて。